「ここ数年来、私がいろんな機会に出席する国際会議において、このままの勢いで経済が成長し、資源が消費され、環境が汚染されていった場合に、はたして地球がいつまで人間の棲息を保証しうるのだろうかという問題意識が急速に高まりつつあることを感じる」
1972年に書かれた「成長の限界」の監訳者、大来佐武郎氏による本書冒頭の言葉です。
知らなければ最近書かれたものかと勘違いしそうなくらい新鮮さを感じます。それほど環境問題は深刻なままということです。
本書の前半では、幾何級数的成長の性質と限界が述べられています。幾何級数的成長とは一定割合で数字が増えていくこと。たとえば2倍ずつ増えるとすると、2→4→8→16→32→・・・・とすぐに膨大な数字になるとともに、幾何級数的な成長を許した場合にどんな結論が待っているかが書かれています。
本書の中で、一日に2倍ずつ面積を広げる水連が池を埋め尽くすまでに残された時間に関するたとえ話が問題の大きさを理解するのに役立ちます。
後半では、一部に幾何級数的仮定をおいた様々なたシミュレーション結果が紹介されます。考慮するのは、人口、一人当たりの工業生産、食糧、天然資源使用料、汚染、出生率、死亡率、サービスなど。多くの場合、持続”不可能”に陥る結果が示されます。
持続可能な社会を成立させる少ないオプションは人口増加と資源使用料を抑制することと書かれています。
さて、実際はどうなのか・・・
世界人口は無理に制限しなくても各国の出生率低下が顕著になり数十年後に減少に転じそうです。
資源使用量の方は、化石資源に関しては温暖化の悪影響が自然災害の頻発という形で顕著になり、慌てて対策が始まったところです。
資源が少なくなっても、再生可能エネルギーとリサイクル原料を使うことで経済成長し続けるグリーン成長戦略を国は推進していますが、果たして、リサイクルとグリーン化だけで、人間の物欲を満たすことができるのか?
「そんなことできない」って、なんとなくみんな気づいているけど、誰も本当のことを言わないよね。
本当のことを言うと、経済成長を許容できなくなって、たちまち足元の生活が苦しくなるのがわかっているから。
世界中の人が過度な経済成長をしないよう規制すればよいかもしれないけど、規制を守る国がどんどん貧乏になって、規制を守らない国が豊かで強くなっていくのは明らか。
結果、行きつくところまで経済成長をし続けるしかない、というのが世の中の大きな流れなのだろうけど、簡単にはあきらめたくないです。
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