通常は何百年もかかるプラスチックをわずかな時間で分解する酵素を発見した、とテキサス大学の研究チームが報告し、研究成果は世界的な学術誌Natureに公開されています
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この方法の素晴らしいところ
研究対象はペット(PET)です。
機械学習によって改良したPET分解酵素を用いることで、最短24時間でモノマー(原料)に分解することができると説明しています。
1週間でほぼ完全に分解できた実験結果も示されています。
熱を使わずにバイオの力でPETを分解できる可能性があり画期的な研究成果です。今後の進展に期待したいと思います。
気がかりなところ
一方で、分解したあとの生成物って大丈夫なの?と気になりました。
PETを分解すると、モノマー(原料)であるテレフタル酸という化学物質に戻ることが論文に書かれています。
テレフタル酸をそのまま放置することはできません。焼却するか、テレフタル酸を分解する別の方法が必要です。
テレフタル酸は、皮膚への影響、眼への刺激などがあり、有害なためです。
この酵素がクローズドな環境で使用され、テレフタル酸が自然環境に漏れ出さないのであれば全く問題ないです。
論文の中では、分解したあと、原料として再使用することが書かれています。
しかしながら、もし埋立地などに捨てられたPETを自然環境の中で分解するために使うことを想定しているなら、その土地を汚染し、人体に影響ある化学物質を増やしてしまいます。
そんなことになるなら、PETのまま固定化していた方がマシという考え方もできます。
まとめ
分解酵素を用いることで、最短24時間でPETを分解するという論文発表がありました。今後の研究成果に期待したいところです。
一方で分解生成物であるテレフタル酸は毒性があるため、分解する環境には注意が必要です。
いろんな技術が開発されて楽しみではありますが、良い点ばかりでなく、技術によってもたらされる副次的な影響を見落とさないようしていきたいと思います。