生分解性があると謳われたプラスチック商品は本当に分解するのでしょうか?興味深々に下のテストを行いました。
目的
生分解性プラスチックであるポリ乳酸(PLA)は60℃以上の温度で加水分解されその後微生物によって分解すると言われています。
そのような環境として度々取り上げられるのが微生物を使って生ごみを処理するコンポストです。実際どうなんでしょう?
PLA製のストローが売られていたのでテストすることにしました。
届いたストローは広告のイメージとは異なりましたが、中身のストローは表示どおりPLAだと信じることにしました。
テスト環境
比較も含めて準備した環境は次です。
- コンポスト
- 海水および水道水
1「コンポスト」は微生物の力を借りて生ごみを減容化します。「コンポスト」には適度な水分と微生物が存在します。微生物が元気な時は50~60℃くらいまで温度上昇しますので、PLAの分解環境としてたびたび紹介されています。準備したのは段ボールコンポストと呼ばれる好気性微生物発酵によるコンポストです。野菜くず、茶殻、コーヒー、果物の皮などを数日で分解してくれます。温度が下がったときは米ぬかや天ぷら油を入れると微生物が元気になって温度回復します。白く見えるのはカビで微生物発酵がうまく行っている証拠です。
温度を高く維持するのは容易ではありません。瞬間的に60℃近くなっても、油断しているとすぐに低下してしまいます。ひとまずできるだけ高く維持することにしました。
2「海水および水道水」は比較のために準備しました。川や海に漂うPLAが分解するかの確認です。ペットボトルの中にいれ、日光のあたるところにおいてますので、日中は50℃を超えることもあるだろうと想定します。キャップのついた方が海水、キャップなしは水道水です。
さて、どうなるか?
実験
テスト開始(2022年6月19日)
PLA製のストローをコンポストの中に埋めました。黄色いのは同タイミングでコンポストに投入した柑橘類の皮です。テスト中はストローをコンポスト基材の中に埋め、写真を撮るときだけ掘り起こしています。
海水と水道水の方は、上の写真の状態でベランダに放置しました。
3日後(2022年6月21日)
柑橘類の皮は分解が進んでいますが、ストローには全く変化はありません。
16日後(2022年7月4日)
コンポストの微生物は元気で約50℃を保っています。柑橘類の皮は消えてしまいましたがストローの方は変化なしです。
水道水と海水に浸したストローも変化なし
30日後(2022年7月18日)
ストローの1本が真ん中付近から折れました。ストローをコンポストに突き刺すときに無理な力がかかった可能性もあるので、分解による劣化か、物理的な力が加わったためかは不明。
ペットボトルの中のストローは変化なし。
40日後(2022年7月28日)
ストローが全体的に柔らかくなってきましした。コンポストに突き刺そうとしても、ふにゃっと曲がってしまいます。分解してきたか??温度は40~50℃をキープ。
50日後(2022年8月7日)
2本目のストローも折れました。徐々に柔らかくなっていますが、分解を実感するほどではないです。
水浸漬の方は目立った変化なし
60日後(2022年8月19日)
その後大きな変化はなし。コンポストの方は時々糠を加えて40~50℃を維持。
105日後(2022年10月2日)
一般的に分解が始まるという3か月が過ぎました。ストローの柔らかさが増してきた気がします。生分解性があるとパッケージに書かれていたお茶パックを加えて様子をみています。
分解促進のためには50~60℃程度の温度が必要なため、微生物くんが元気に活動できる環境を整える必要があります。生ごみだけだと温度が上がりにくいため、コンポストには米ぬかや天ぷら油を適度に加えています。
水浸漬テストの方は全く変化が感じられません。キャップがついた方が海水、ついてない方は水道水です。いずれも微生物も温度もたりないのでしょう。
161日後(2022年11月27日)
さらに柔らかさが増し指で押すと崩れそうな強度になってきました。小さく折れてしまったのでコンポストの中で探すのも大変です。前回追加した生分解性があるというお茶パックの方はそれほど変化を感じません。温度は40~50℃をキープしています。
224日後(2023年1月29日)
さらにバラバラと小さく壊れてきてきました。気温が低くコンポストの中も0~10℃です。時々天ぷら油や米ぬかを入れると、翌日は40~50℃まで温度上昇するので微生物は元気です。段ボールが濡れているのは、天ぷら油の分解により水蒸気でて結露してしまったためです。
お茶パックの方は今のところ目立った変化を感じません。
我が家は柑橘類をよく食べるので、その皮を刻んで投入しています。コンポストは生ごみの減量化にとても便利です。
318日後(2023年5月3日)
だんだん、ボロボロになってきました。小さすぎて、すべてを回収しきれてないようです。これを生分解というのか、マイクロプラスチック化しているだけなのか、見た目ではよくわかりません。お茶パックの方は毛羽立ちが目立ってきました。
406日後(2023年7月30日)
これがテスト開始後約1年と少し経った後の生分解プラスチックストローです。
ストローはボロボロと崩れ、割れた鳥の骨ようになってきました。もっとたくさんの小片がコンポストの中に散っているのでしょうが、回収しきれていないです。
溶けるように消えていくのかと思っていましたが、まったく違っていました。
分解したと言うこともできるでしょうし、マイクロプラスチック化しただけ、ということもできます。微妙な状態。
微生物豊富で適度な温度があるコンポストでもこの程度しか分解しませんので、普通の土や海岸などではもっと分解遅いことが想像されます。
水に浸漬したストローに大きな変化はありません。青キャップある方が海水、キャップなしが水道水です。海や川に流れていくとほとんど変化しないことが想像されます。
お茶パックの方はさらに繊維の毛羽立ちが目立ち始めています。土に返っているという印象ではありません。こちらは昨年10月にテスト始めたので301日目の結果です。
560日後(2023年12月31日)
さらに小さくバラバラになり、ペットボトルの下においた4片しか発見できませんでした。
海水と淡水に浸したペットボトルの方はほぼ変化なしです。
ティーパックはどこに行ったか分からなくなりました。小さく分解したのか、それとも誤って紛失したか。。。
735日後(2024年6月23日)
テスト開始して約2年、ストロー片を見つけることはできませんでした。
すっかり分解してしまったようです。
ペットボトルの方は全く変化ありませんでした。
まとめ
生分解性プラスチックであるポリ乳酸(PLA)製のストローを使って、コンポストの中で分解実験をし、分解の様子調べました。
ストローが見つからなくなくなるまでに要した時間は約2年です。
一般的なプラスチック製のストローであれば2年くらいではほとんど変化しないでしょうから、ポリ乳酸(PLA)製のストローはコンポストの中で分解しやすいと言えるのかもしれません。
ただ、小さくバラバラに変化してきた経緯から、土に返ったと言えるか、単にマイクロプラスチック化したのかはよくわかりませんでした。
土壌に放置された場合は同じようにバラバラに分解していくのでしょう。
他方、海水や真水を模擬したペットボトルに浸漬したストローはほとんど変化はありませんでした。
川や海に流されたストローは2年くらいでは分解しないことを示唆していると考えらえます。
テストを通じて感じたことは、生分解性があるからといって、過度な期待はできないということです。逆にマイクロプラスチック化を早めてしまっている可能性もありそうです。
ごみは持ち帰り、決してポイ捨てしないようにしましょう。
これでテストを終了します。